
眉下切開は傷跡が目立つと悲惨極まりない手術です。
そのため、いろいろなやり方があってしかるべき・・などと言ったゆるい感じの手術ではありません。
あらゆることを少しでも有利なように厳しく取捨選択して行わなければ、必ず傷跡が目立って悲惨なことになります。
約20年間で3000例以上(2025年3月時点)の眉下切開を行ってきて、その傷跡に対するお叱りがほとんどないわたくしがそのノウハウをご紹介します。
前回は切開法、前々回は縫合法について述べてきましたが、今回は第三弾として抜糸や術後の後療法などについて詳述したいと思います。
はじめに・・・眉下切開の傷跡ゼロは不可能です
眉下切開の傷跡ゼロはぜったい不可能!どんなに上手くメイクしてもかくすことはできない!美容外科医や形成外科医からは、このような話ばかり強調されていますけど、大事な事実がねじ曲げて伝えられています。
最も大事なことは個人差や体質の差よりもケタ違いに執刀医の技術や丁寧さによる違いの方が大きいということです。
直後にスッピンで家族からもバレないようなキズ、十年経っても前髪を大袈裟に作って厚化粧しても他人が遠くから見てクッキリと目立つような汚い傷跡まで様々です。
そして、傷跡が目立つ原因のほとんどは執刀医の技術の拙さや手術の雑さによるものであるという恐ろしい真実があります。
①眉下切開の傷跡は執刀医次第
わたくしがこのことに気づいたのは他院眉下切開修正相談のうち身の毛がよだつような汚い傷跡だった数名が、同じ形成外科系美容外科JSAPS専門医執刀によるものだったからでした。
他院の眉下切開後をみて「だれ先生の手術でしょ!」と占い師のように当てることはできませんけど、名前を聞くと納得することしかありません。
傷跡については体質や個人差によるものより、執刀医による差のほうがはるかに大きいようです。
眉下切開のキズって手術直後スッピンで身近な人から近くで見られてもバレないレベルから
数年後、厚化粧で前髪作っても遠くから他人が見て何それって言われるレベルまである、画像は3か月後の傷跡 pic.twitter.com/Miv5Wz4N4S— 六本木境クリニック (@roppongi_sakai) July 28, 2024
また、世間では「若い人は傷跡が目立つから眉下切開を受けないほうがいい」とまことしやかにいわれています。でも、10代から90代まで手術しているわたくしの経験上、若い人のほうが傷跡が目立つということはありません。
何と・・眉下切開の傷跡がゼロにできないという事実は、そんなに大事なことではなかったのです。それよりも執刀医選びのほうがはるかに大事だと断言できます。
②眉下切開を他の手術で代用できるのか?
眉下切開の傷跡がゼロにできないから他の美容外科手術や施術で代用しようとする意見のほうがもっと要注意です。
眉下切開以外ではどうにもならない状態は意外と多いものです。
代表的なものはまぶたのたるみと厚み、おでこと目尻のしわです。まぶたのたるみはハイフ・高周波やレーザーのような照射系治療では改善できません。
とりあえず二重埋没・切らない眼瞼下垂のように糸で止めても、たるみを無理やり二重に押し込めるので不自然になることが多いし長持ちしません。
結局どこかで切るしかないのですが、たるみ取り二重切開(保険適用の眼瞼下垂手術その他)のように二重ライン付近で皮膚を切除すればするほど不自然な整形顔になってしまいます。
二重幅のたるみに前額リフトや額挙上を選ぶリスク
二重幅が狭くなってきた程度のまぶたのたるみだったら前額リフトや額挙上でも何とかなると考えている美容外科医や形成外科医も多いようです。
効果を出したい部位から切開線までが遠すぎて結果が安定しませんし、剥離範囲が広く手術侵襲が大きいので合併症やリスクがあります。
怖いというイメージを持っている人が多いみたいですが、わたくしは正しい意見だと思っています。
代表的な症状として頭がしびれ痛痒くてシャンプーできないなどといった知覚異常があります。わたくしの経験上、眉下切開での発生率は0.1%以下ですけど、前額リフトや額挙上ではほぼ100%起きています。
まぶたの厚ぼったさや重たさに眉下切開+脂肪とりやルーフなどの併用は必要ない
眉下切開と脂肪とりを併用した場合は内出血や腫れがひどくなるのでダウンタイムが長くなります。
まぶたの厚ぼったさや見た目の重たさに対して脂肪をとっても皮膚があまってたるんだりシワシワになります。眉下切開では厚ぼったさとたるみが同時に改善されるので問題ありません。
眉下切開と同時にルーフや眼輪筋をとられた場合にはデコボコした・同時に眼窩脂肪を脱脂された場合には奥目になったりシワシワになったという相談が多いです。
ボトックスは基本的にまぶたが下がって重くなるし
前額リフトは大量出血して痛くて生え際が変になることが多い
眼瞼下垂の手術や二重埋没・切開などまぶたの開きが良くなる手術は
ひたいのしわは減るが目尻のしわが増える
ひたいも目尻もしわが減るのは眉下切開だけ pic.twitter.com/wCErXkFmZr— 六本木境クリニック (@roppongi_sakai) October 29, 2020
眉下切開が厚ぼったいまぶたに向くからといって、くぼみ目には向かないというわけでもありません。くぼみ目の人でも比較的よい結果が出ています。
眉毛を指で持ち上げるとまぶたのくぼみが悪化しますけど、それは前額リフトや額挙上のシミュレーションになっています。
眉下切開では皮膚を切りとるので皮膚がテント状にピント張って眉毛が少し下がるのでくぼみ目も改善することのほうが多いです。
おでこや目尻のしわ治療にボトックス、二重埋没・二重切開、眼瞼下垂手術は向いていない
おでこや目尻のしわ治療は一般的にボトックスが行われていますけど、長持ちしないですし続けていると筋肉が弱るのでたるみが悪化してきます。
二重埋没・二重切開や眼瞼下垂手術などでもひたいのしわは改善しますが目尻の皮膚はあまるので目尻のしわやたるみは悪化します。
一方、眉下切開ではおでこと目尻のしわが同時に改善できます。前額リフトや額挙上でも似た傾向がありますけど前述の理由で第一選択になることはありません。
眉下切開後の傷や抜糸の誤った知識8つ
まずは、眉下切開後の傷や抜糸に関して、どうしてこんなにも誤った知識が広まっているのでしょうか。インターネット上に溢れる情報は、一度誤った内容が発信されるとコピーコンテンツのように増殖していく危険があるように感じます。
少し話が逸れましたが、ここでは抜糸や術後の後療法などについて誤った知識や情報について、私なりの見解を詳述していきたいと思います。
①眉下切開後の傷は洗えない?
「傷口は何日濡らすことができませんか?」
「何日お風呂に入れませんか?」
「髪を何日洗えませんか?」
「顔は何日洗えませんか?」
などといまだに聞かれることがあります。
このご時世、手術後に傷を洗うことができないということは、およそ・・その先生は傷の専門家ではないということですよね。
わたくしはほとんど生傷がゼロと言えるほどに傷をピッタリ合わせていますので、手術後すぐから、ボディーソープや洗顔剤、シャンプーを付けて洗ってもよいことにしています。
ばい菌なんて油汚れの中にいるので、そうしないとばい菌は減りません。
そして、ボディーソープなどで洗ったほうがかゆみが少ないようです。
術後の傷を洗わせない医師は、「創部の安静のために洗うな」ということなのでしょうけど、洗わないと就寝中かゆくなって無意識にゴリゴリこするので傷あとは汚くなります。
まさに本末転倒ですよね!
②眉下切開後の傷はガーゼや絆創膏・テープを貼らない
眉下切開後、「傷にガーゼや絆創膏・テープを当てますか?」と言った質問があるのですが、完全に変ですよね。
最近、創傷治癒や形成外科の専門医のあいだでは、傷には何もつけないか、創傷被覆材などを付けます。ガーゼやテープ・絆創膏などは昔の治療法です。
ガーゼやテープ・絆創膏などを付けていて、入浴や洗髪・洗顔はどうするのでしょうか?
前述のように洗わないと、かゆくなって掻きむしって傷跡が汚くなります。フィルムなどを貼って濡らさないようにさけてお風呂に入ると、当然ながら傷口がむれてもっとかゆくなります。
そして、ガーゼや絆創膏は傷の保護のために当てているのでしょうけど、テープや絆創膏をはがすときの刺激で傷跡が汚くなります。
中③眉下切開後の傷は創傷被覆材・キズパワーパッドを貼らない
ちょっと目を疑ったのですが、傷に創傷被覆材やキズパワーパッドを貼った方が良いなどと言った意見をネット上で見つけました。
眉下切開の術後、テープや絆創膏、キズパワーパッドを貼る意味がどうしても分からない。
当院では手術直後から洗顔剤で傷口を洗ってもらっているけど、洗っていけないと言われたという話もある。洗ってはいけない理由も分からない。ばい菌が増えて、かゆくて臭くてろくなことがない。写真は抜糸前 pic.twitter.com/zX7sD0euV6
— 六本木境クリニック (@roppongi_sakai) March 23, 2020
噴飯ものですよね。傷口がピッタリ合っている状態に対して、創傷被覆材やキズパワーパッドが必要となることは絶対にありません。
創傷被覆材やキズパワーパッドが必要ということは、生傷の部分が多く、浸出液が多いということです。
すなわち、傷を丁寧に縫っていない、傷がピッタリと合っていなくて隙間が多いということに他なりません。
そのような縫合では傷跡がきれいになるはずはありませんよね。眉下切開のように傷跡のきれいさがシビアに問われるような手術では致命的と言わざるをえません。
むしろ・・創傷被覆材やキズパワーパッドは、はがすときの刺激で傷に悪いとさえとわたくしは思います。
④眉下切開後1週間以内に抜糸するのは早すぎる
眉下切開で早めに抜糸すると、得られるものが小さくて失うものが大きい印象があります。
わたくしは眉下切開では8日から2週間くらい(10日前後)で抜糸することをおすすめしています。
形成外科で抜糸が早ければ早いほどいいなどと言った意見の医師もいますが・・・。太い糸で強く雑に縫っていないかぎり、抜糸が少し遅くても糸のあと(縫合糸痕)が付いて困ったりはしません。
7-0か8-0のような極細糸で丁寧に縫って適度な強さで結んでいると、10日以上経ってからの抜糸でも問題になることはほとんどありません。
眉下切開で早めに抜糸するとたまに傷口が開いて浸出液がでたり、傷跡の幅が広がってくぼんだ傷跡になる場合があります。それどころか赤く盛り上がったミミズバレのようなケロイド状の傷跡・肥厚性瘢痕になる可能性すらあると思います。
⑤眉下切開後の傷跡にマイクロポアなどのテープを貼らない
わたくしは溶けないナイロン糸で真皮縫合や眼輪筋の中縫いが適切になされていれば、テープは必要ないと思います。
抜糸した後の傷跡にマイクロポアなどのテープを貼ることは形成外科でよく行われている一般的な方法です。
わたくしは責任転嫁法の一種だと疑っています。傷跡が汚くなったら、「テープ負けしたのはテープさぼったでしょっ!」てヤツですね。
テープって、お肌が丈夫な人でもかゆくて、そう何日も貼れないですよね。その上、眉下切開でテープを貼ると眉毛が抜けるだけですよね。
その上、テープをはがすときの刺激でかえって傷跡が目立つようになると考えています。
⑥眉下切開後にリザベン(トラニラスト)を内服する時点で何かがおかしい
リザベン(トラニラスト)内服についてネット情報にあったときには冗談かと思いました。
リザベン(トラニラスト)って肥厚性瘢痕(ケロイド状の傷跡)の薬です。そのような薬って傷跡が汚いことが前提ですから・・。
わたくしは3000例以上眉下切開を行ってきて、肥厚性瘢痕になったことは一度もありません。それどころか、肥厚性瘢痕になるかもしれないと心配になったことすら一度もありません。
眉下切開で肥厚性瘢痕になることや、リザベン(トラニラスト)を使わなければならないことなんて・・よっぽどのことですよね。
リザベン(トラニラスト)を使う前に、切開法や縫合法など何か他のことを見直した方がいいと思われます。
⑦眉下切開後にヒルドイド・アットノン・ケロコートなどを塗る必要はある?
何と・・ヒルドイドやアットノン・ケロコートを塗った方が傷跡がきれいになるなんて・・ネット情報もありました。
ウソでしょ。
ひどく目立つ傷跡についてはヒルドイド・アットノン・ケロコートなどを塗るか塗らないかで差がつくのかもしれませんが、目立たないきれいな傷跡については蛇足ですよね。
やってもいいけど意味がなさそうですね。
⑧「眉下切開の傷跡にアイブローがのらない」は嘘です
六本木境クリニックの眉下切開では傷跡からも発毛するため、眉毛の下に沿って傷跡があるというよりは眉毛の中に傷跡が入ってかくれてしまうといったイメージです。
あたかも眉毛の中を切開したかのように見えるほどで、眉下切開を行っている他の形成外科医や美容外科医がおどろくほどです。
そのため眉下切開手術後の傷跡にアイブローが乗らないといわれることは少ないのですが、なにも傷がない人と全く同じようにアイブローが乗っているわけではありません。
傷跡の幅が広くてアイブローが乗らない範囲が広いほど極端に目立ちます。そして傷跡の幅が狭いほど他人から見るとアイブローが普通に乗っているように見えます。
また、当院の眉下切開は同じ理由で「光の加減で傷跡が目立つ」などと言われることが比較的少ないです。
眉下切開は傷跡が目立たない手術と言えるのか
一般的な眉下切開は他の手術に比べて自分から見ても他人から見ても傷跡が目立つ手術です。
たとえば二重切開や眼瞼下垂の手術では傷跡が二重ラインの溝にかくれるので目を閉じたとき他人からは目立っていても自分からは見えにくいものです。
また、切るフェイスリフト(切開リフト)や前額リフト・額挙上は、どんなに傷跡が他人から見て目立ってたとしても自分からは見えにくいのでクレームになりにくいです。
よく比較される人中短縮術も鼻の影になるので、眉下よりも傷跡がずっと目立たないです。
唯一、眉下切開よりも傷跡が目立つと断言できる手術は眉上切開です。
わたくしも顔面神経麻痺の人にたくさんやっていますけど、不全麻痺でも傷跡が目立つと叱られるので健常人の美容目的で使用するべきではありません。
長くなりましたが、眉下切開は美容目的で頻回に行われる手術の中では自分から見ても他人から見ても最も傷跡が目立つ手術だと言えるでしょう。
そのため他の部位の手術よりもずっと丁寧な手技が要求される手術だといえます。
【実例紹介】眉下切開の傷跡の経過をご覧ください
大前提として目立つ汚い傷跡が数年後に時間経過でキレイになることはありません。キレイなキズしかキレイな傷跡にはならないのです。
【眉下切開の経過】①術前
術前デザイン、まぶたのたるみや厚ぼったさが高度な場合これくらいの面積で皮膚切除します。ルーフ切除や脱脂が必要な手術は切除面積が小さいと考えています。
【眉下切開の経過】②手術直後
手術直後、青色半透明の糸で皮膚縫合しています。結紮が1回だけなので結び目がとても小さいことが私の手術の特徴ですが、血液がついてる状態ですから比較的目立ちます。でも、直後から洗顔剤で洗っていただきますから血液がだんだんとれて目立ちにくくなっていきます※洗えないとかゆくて臭いですし
【眉下切開の経過】③手術翌日〜
翌日からパウダーやリキッドで眉毛を描くことができますしアイメイクも可能です。心配な人は眉毛を描かなくても意外と他人からバレることが少ないですし、洗ってると血液がとれてどんどんキレイになって行きます。(画像は抜糸前、眉毛部分はスッピン)
【眉下切開の経過】④抜糸前〜抜糸後
抜糸前は化粧しなくてもバレなかったけど、抜糸すると赤みが気になり隠すようになったという話が多いです。そのようなケースでも他人は赤っぽい色で眉毛を描いているんだろうと思ってることが多いようです。抜糸の翌日からはまたパウダーやリキッドで眉毛を描くことができます。(画像は抜糸後、眉毛部分はスッピン)
【眉下切開の経過】⑤手術から3カ月後〜
手術から3カ月後です。他院眉下切開の傷跡と比較していただけますとケタ違いにキレイだと思いますが、タネもしかけもありません、超丁寧ってだけです。※魔法みたいなこと言う人はだいたいウソつきです。
【眉下切開の経過】⑥手術から6カ月後〜
当院で眉下切開を受けてくださった女性の場合、半年以上すぎて自分で気になると言われることはほとんどありませんが、若い男性の場合には1年くらい気になることがあるようです。そして、他人は自分とは比べものにならないくらい傷跡が見えていません。
眉下切開の傷跡が目立ちやすい人の特徴は?
眉下切開の適応の広さは執刀医の技量に左右され、この手術に対してケースバイケースという表現を使う形成外科医や美容外科医は自信がないだけだとわたくしは思っています。
ですから、10代から90代まで老若男女あらゆる特徴の人の手術を約20年3000以上例おこなってきましたが、大きな個人差や体質の差を感じたことはありません。
それでも、あえて比較的傷跡が目立ちやすい人の特徴を男女・年齢・まぶたの形状(厚ぼったさやうすさ・くぼみ目)にわけて考えてみました。
結論はいつも通り執刀医の技量や丁寧さほどの差はないということになってしまいますけど、多少の差について詳しく考えてみました。
眉下切開の傷跡の男女差は?
女性の場合、当院の眉下切開後に半年以上すぎて気になると言われることはめったにありませんが、若い男性の場合には1年くらい気になることがあるようです。
このことの理由ですが、男性は力が強くて洗顔や無意識にかくとき強い力で行っているため比較的に傷跡が目立つのかもしれません。
また、一般的に男性はメイクする習慣がないためメイクしないと傷跡がかくせない場合に不満が生じるのかもしれません。
男女とわず長い期間(3か月から半年)傷跡付近を強く刺激しない人のほうが傷跡が目立たない傾向がありそうです。
眉毛を描くのもペンシルタイプよりパウダーやリキッドを長期使用するほうが無難でしょう。
眉下切開の傷跡の年齢差は?
また、若い人のほうが傷跡に対するクレームは比較的多い傾向がありますから、切って縫うことに自信がない美容外科医や形成外科医ほど、眉下切開は高齢者の手術であるという結論に持っていきたいようです。
このような意見を述べると、「若い人に眉下切開しても年取ったらまたたるみます」なんていうドクターもいますけど、それは切除面積の狭いやったふり手術なんだろうと思います。
当院で2回目の眉下切開を受けるかたは1%程度ですから切除面積が広ければ、おでこの前頭筋の力が抜けて眉毛が下がったことを「またたるんだ?」と勘違いしているだけだと思います。
眉下切開の傷跡は厚ぼったい瞼とくぼみ目だとどうなる?
当院の眉下切開でもまぶたがうすい人やくぼみ目の人には傷跡が比較的目立つ人が散見されます。
眼輪筋もうすい傾向があるし、中縫いを強くかけてまぶたのくぼみが悪化しないように中縫いを比較的弱くかけざるをえないケースもあるからだと思われます。
しかし、まぶたがうすい人の中には西洋人のように傷跡が非常に目立たない人も含まれていますから、まぶたがうすい人のほうが傷跡の目立ち方にバラツキがあるというくらいの話です。
反対にまぶたが厚ぼったい人は中縫いを強くかけやすいので傷跡がキレイになりやすい印象を持っています。
いろんなケースについて述べてきましたが、当院で傷跡が目立って無料修正を行う人でも他院眉下切開修正手術よりは傷跡が目立たないです。
また、最も目立つ眉下切開の傷跡相談ワースト3は全て同じ1人のJSAPS専門医による手術後でしたから、体質や個人差よりも執刀医の差のほうが大問題ってことは間違いなさそうです。
「眉下切開の傷跡の盛り上がりと対処法」についてはこちらの記事で詳しくご説明しています。ぜひ合わせてご覧になってみてください。
眉下切開の傷跡が目立たない工夫は執刀医の手技にあり
以前、形成外科専門医の後輩から眉下切開の傷跡を肥厚性瘢痕(ケロイド状の傷跡)にしないコツは?という質問があったのにはおどろきました。
なぜ、おどろくのかですって?わたくし自身、約20年間で3000件以上の眉下切開を行ってきましたが、肥厚性瘢痕になるどころか、肥厚性瘢痕になるかもしれないと心配になったことさえ一度としてありませんでした。
その証拠に眉下切開の手術同意書に肥厚性瘢痕やケロイドといった言葉を一切もちいていません。
そんなわたくしが自分自身の経験からえられた眉下切開の傷跡をきれいにするコツについてお話したいと思います。
傷跡を目立たせない肥厚性瘢痕にならないような工夫といっても残念ながら特別なクスリや再生医療の話は一切でてきません。この世に魔法のような薬や方法は一切ありません。
眉下切開で肥厚性瘢痕になったり傷跡が目立つのはほぼ100%手術手技の問題です。眉下切開の話で薬や再生医療・レーザー機器などの話がでてきたら切って縫うことが下手な医師の言いわけにすぎないとお考えください。
眉下切開の傷跡が目立ちにくい手技
これから眉下切開の傷跡を目立たせない肥厚性瘢痕にしない工夫といえる具体的な手術手技についてお話しします。
まず最初に術後ケアはいわば敗戦処理であってキレイな傷跡に特別なケアは必要ないことを強調しておきます。キレイなキズしかキレイな傷跡にはなりません。
リザベン、ケロコート、アットノン、ヒルドイドソフト軟膏など一般的なクスリだけでなく再生医療やレーザーの話が出てくるような美容外科クリニックや形成外科は眉下切開の傷跡が目立つといってるようなものです。
また、テーピングは、はぐときの刺激で眉毛が抜けるし、そのつど傷跡が引っぱられて目立つようになると私は考えています。
眉下切開の傷跡が目立ちにくい手技①「眉毛全長切開法」
眉毛全長切開法はカモフラージュ効果を活用する
傷跡は短ければ短いほど目立たないという鉄則があります。一般的にはあまり言われていませんが、このことには例外があります。それは何かと見まちがえてしまうような傷跡にすることです。
眉下切開では眉毛やメイクにそった目立たない傷跡になると目立ちにくいものです。そして、一部だけより眉毛全体に傷跡があるほうが手術直後のキズからまわりの人が描いてる眉毛だと錯覚するのでカモフラージュ効果があります。
眉頭ほど眉毛の中に傷跡が入ることが重要でして、眉頭の下にそった傷跡は昔の極道風眉アートを連想させる上に修正手術が難しくなるので避けるべきです。
眉頭に切りこんでも目立ちにくい技量をもった医師以外は眉尻側だけのひかえめな眉下切開にとどめていただきたいと考えています。
眉下切開で眉頭下にそって切られてしまうと
修正大変だから眉頭切り込む自信ない医師は
眉尻だけひかえめに切って!
画像はデザイン眉頭下の眉毛残すことがコツ https://t.co/iUgPMqkNlk pic.twitter.com/WrN1H9SopA— 六本木境クリニック (@roppongi_sakai) January 15, 2024
眉毛全長切開法のデザインはいつもの眉毛を参考にする
眉下切開の手術当日、ふだん眉毛を描いている人はふだん通りに描いてきてもらいます。その描いた眉毛の形を参考にして眉毛側の切りかたをザックリと決めます。
わたくしがチラ見した後すぐに洗顔で眉毛のメイクを落としてもらいますから多くの人が「わざわざ眉毛を描いてきた意義は?」とビックリされますけど、しっかり記憶していますからご安心ください。
閉瞼・前頭筋弛緩状態で、坐位でのマーキングと仰臥位での計測を何度も繰り返して左右の眉頭と眉尻の4点を決めます。
次に左右で残る眉毛の量にできるだけ差が出ないよう上側の線を決めます。
最後に、開瞼時と閉瞼時のまぶたと二重の形状やたるみの程度と左右差を考慮して下側の線を決めます。
眉下切開の傷跡が目立ちにくい手技②「毛包斜切断法」
毛包斜切開法ではお顔に合わせた微修正が必要
わたくしが毛包斜切断による眉下切開を行うとき、手術用ベッドを少しギャッチアップしています。
お顔の彫が浅い人はギャッチアップを多めにしています。逆に彫が深い人は多めにギャッチアップすると眉頭側が切りにくいのでフラット気味にしています。
また、睫毛側は自由縁といって眼球の上に浮いておりどこにも固定されていませんからもともと不安定です。
そのため眉毛側を先に切ってしまうと安定せず上手く切ることができなくなりますから切開はかならず睫毛側から行います。以前は睫毛側も眉毛側も45度くらいの角度を意識して切っていましたが、睫毛側は皮膚が非常にうすいので最近は60度のイメージで切っています。
次に眉毛側を切開しますが毛根をたくさん切断するため非常に硬く感じますからメスは新しいものに交換したほうがいいです。上下を切った後でメス刃は替えず眉頭⇒眉尻の順に切開し形成剪刀で軟部組織を切除します。(この時なれてない先生は11番メスを使用してもいいと思います。)わたくしは眉下切開1件につき合計4枚の15番メスを使用します。
これらすべての行程で皮膚がささくれると上皮成分が迷入して高確率でアテローマやミリウムなどのシストが発生しますから皮膚がささくれないように拡大鏡で注意深く確認しながら切開して行きます。
もし皮膚のささくれが生じた場合には先細アドソン鑷子と11番メス・眼科剪刀を用いて整えます。眼輪筋を傷つけてしまうと出血が多くなり内出血や腫れなどダウンタイムがかならず長くなりますから、眼輪筋上で手術を行うことにしています。
また、わたくしが眉下切開と同時にルーフ切除・眼輪筋切除や眼窩脂肪の脱脂を行わないのもほぼ同じ理由です。
DTを短くするためにはエピネフリン入りキシロカインで局所麻酔を注射した後10分以上待ってから執刀したり低出力のバイポーラを用いた丁寧な止血も必要です。DTがヒドいようだと手術を受けてくれる人が少なくなるので、その執刀医が上手くなることはありません。
自分が執刀するあらゆる症例の傷跡をキレイにするためには常日頃からダウンタイムを意識した手術を行うことが大切です。
毛包斜切開法は縫う際に丁寧なエバートが必要
皮膚縫合終了後、全ての縫い目に対して鑷子(せっし)でインバート(表皮が内側に入り込むこと)していないかを確認し1カ所ずつ丁寧にエバート(表皮を外側に出すこと)させます。
眉下切開のとき眉毛全長切開で眉毛を連想させるカーブ状に切るとトラップドア(飾り窓)変形という現象で眉毛の下側が盛り上がりやすくなります。
さらに毛包斜切断法で斜め切りすると、うすい創縁が分厚い創縁上に乗りあがりやすいのでトラップドア(飾り窓)変形が強調されます。
睫毛側のうすい皮膚は内側にローリングして上皮成分である表皮が創内に入り込みアテロームやミリウムなどのシストを形成したり、キズの治りが悪く溝状の傷跡になります。
また、うすい皮膚はあらゆる操作中、超丁寧にあつかわないとちぎれて表皮が内側に入り込みアテロームやミリウムなどのシストを形成しやすくなります。
うすい皮膚を多くしたほうがちぎれにくいのですが、トラップドア(飾り窓)変形やインバート予防のためにあえて睫毛側のうすい皮膚を少なく眉毛側の皮膚を多めに縫合しています。
毛包斜切開法その他の工夫
わたくしの糸結び(結紮)は2動作による1回結びで結び目が1つしかありません。通常は極細透明な糸で縫っても血液がついてると目立ちますけど、1回結び方では結び目が小さいので目立ちません。
いつも形成外科医や美容外科医から「1回結びでもほどけないのか?」という質問をされますが、この方法によりかえって結び目がほどけなくなりました。
もしほどけると傷口が開いて出血しますから絶対ほどけないように桁違いの緊張感と集中力で1つ1つの糸結びを行っています。背水の陣や防御の構えがない薩摩示現流のような意味合いなのかもしれません。
眉下切開手術法でNGなこと
眉下切開手術法でNGなことをまとめてみます。
- 眉下切開は眉毛の下に沿って切ってはいけない!
- 眉下切開ではwedge incisionで切ってはいけない
- L字型のような独特な形に切るのはNG
- 眉毛の外側だけたくさん切ってはいけない
それぞれについて詳しく解説します。
眉下切開は眉毛の下に沿って切ってはいけない!
眉下切開で眉毛の下に沿って切るのはダメです。
眉毛に切り込まなければ、眉毛から下に外れた傷跡となって、傷跡がすごく目立ちます。
眉毛の下に沿って切るという表現には驚くべき行間(知っておくべきこと)があります。その行間を読むと、その医師がどうして、眉毛の下に沿って切るようになったのかが透けて見えます。
まず、眉下切開では毛包斜切断法でなければ傷跡から毛が生えませんので確実に傷跡が目立ちます。毛包斜切断法では当然、眉毛の中に切り込みますので、眉毛の下に沿うというような表現は用いません。
そして、毛包斜切断法が上手く行かなければ眉毛にどれだけ切り込んでも、創縁(傷近く)の毛根が死んで、術後に眉毛が抜けて行きます。
その結果、眉毛の下に離れた傷跡となります。
毛包斜切断法が上手くいかないからと眉毛がほとんどなくなるほど眉毛に切り込んだとしても、眉毛から下に離れた傷跡となります。眉毛が少なくなれば少なくなるほど、当然・・傷跡は目立つことになりますよね。
何度も毛包斜切断法による眉下切開を行って上手く行かない場合、どうせ・・眉毛から離れた傷跡となるのであれば、眉毛を減らさないほうがずっとマシだということです。
つまり、眉下切開が上手くいかないから眉毛の下に沿って切っているのです。想像力をフル回転しないとこの行間は読み取れませんよね。
でも、そんなに深く考えずに上司や先輩などの上級医師から言われたというだけで、眉毛の下に沿って切っている医師もいるかもしれませんが、そのような医師が眉下切開を得意としていることはないし、得意になることもないと思われます。
眉下切開ではウィッジインシジョンで切ってはいけない
毛根を傷つけないように毛根に沿って切ることをウィッジインシジョン(wedge incision)?と表現しているネット情報がありました。
一方、毛包斜切断法はできるだけ多くの毛包を切断するような方向に切りますから、毛根を傷つけないように毛根に沿って切ることは、毛包斜切断とほとんど反対方向に切っているのだと思います。
毛根を傷つけないという表現はとても耳障りがいいのですが、ウィッジインシジョン(wedge incision)?では傷跡を目立たなくすることはできません。
わたくしもはじめてウィッジインシジョン(wedge incision)と言う表現に出くわしたとき、ただ単に毛包斜切断法を英語で表現したものだと思ったのですが、日本語訳も書いていて毛包斜切開と言った表現だったと思います。
切断していないということですよね。
本物の毛包斜切断法では毛包を切断することこそがキモです。
斜めに切断された毛包の上に薄い皮膚をのせて縫合すると傷から眉毛が生えてくることが、毛包斜切断法の大きな意義の1つです。
毛包を傷つけないような方向に切ると前述のように創縁(傷周囲)の毛根が死んで、眉毛が抜けて二度と生えてこない部分ができますので、眉毛から下にずいぶん離れた傷跡となります。
当たり前だけど・・・L字型のような独特な形に切るのはNG
L字型のような変わった形に切らないことも大切です。そのような傷跡はとにかく人目を引くからです。どの分野でも異様なものは人目を引きます。
下まぶたは目玉の重みを支えるためにほとんど動かず、目のシャッター機能は上まぶたの動きに大きく依存しています。
上まぶたの動きはヒトの表情の重要な部分を占め、他人は上まぶたを見ています。
そのため、眉毛の下は最も人目を引きやすい部位です。
眉下切開では見た人が眉毛の一部だと誤認するようなカモフラージュ効果が求められるため、眉毛の形を連想させるような傷跡でなければ、そこそこ目立たない傷跡でも人目を引きます。
わたくしは本人や周りの人がその人の眉毛を連想する雰囲気に仕上げるため、普段眉毛を描く人には手術日に眉毛をいつも通り描いてきてもらっています。
描いてきた眉毛を参考にして、眉下切開で皮膚切除する範囲のデザインを描きます。この時、毛包斜切断法を上手く行うことができれば、上側のデザインに似た傷跡となります。
なぜかって、もともとまぶたの皮膚は眉毛側の方が分厚く、睫毛側の方がうすい上に、眉毛側は筋肉・骨と固定されています。
一方、睫毛側は目玉の上で宙に浮いており、いわば自由縁・フリーマージンと言った状態です。
その上、毛包斜切断法で斜めに切ると、上側(眉毛側)の創縁は切断された硬い毛根が点在する分厚い皮膚、下側(睫毛側)はうすい皮膚となります。
当然ながら・・上側の固定された硬い部分の形に近くなりますので、手術後の傷や傷跡の形を予測しやすいと言えます。
眉毛の外側だけたくさん切ってはいけない
眉毛の外側だけ皮膚を切り取るか外側に極端に偏った切り方をすると、まぶたが外側に向かって引っ張られ、ひきつれて変な線が入るようになったり、つり目になります。
その上、まぶたは外側ばかり上げると内側が下がりますから目頭が下がってツリ目が強調されます。
つり目や濃い斜めの線はネット画像でもハッキリ分かります。でも、最も多いタイプ、うすい線やまばたきした時だけに出現するような線の場合、ネット画像では分かりません。
その上、不自然な線はまばたきをしたときだけに出現するのですから、自分でも気が付いていないことがほとんどです。
他人はみんな変だと思っているけど言えない・・と言った地獄絵図のような感じになってしまいます。
まとめ「眉下切開の傷跡が目立たない方法は執刀医で異なる」
わたくしは傷跡修正の皮膚切開でも斜め切りを多用していますから、眉下切開では眉毛がない人や毛根がない部分でも毛包斜切断風に切開しています。
中縫いは眼輪筋(最近は真皮も少しかけるようにしています)を5-0ナイロンで縫って、皮膚縫合は7-0ナイロンで単結節縫合を行います。
連続縫合は創縁が不安定な部位があるので傷跡がキレイになりにくいと考えています。
ただし、以上のことが誰でもできるわけではありません。最近はわたくしと同じ方法で行われた悲惨な結果の相談が多いので、切って縫うことに自信がある形成外科医や美容外科医しかマネしないほうがいいのではないか?なんて思っています。
下手に毛包斜切断された場合にはミリウムやアテローマなどのシストが多発して凸凹でマダラの傷跡になった悲惨な人が多いです。また、真皮縫合をナイロンで下手にかけられると凸凹で長期間苦しむことになるし皮膚縫合が下手だとギャザーが激しい人もいます。
眉頭を下手に切られた場合の修正は一番難しいので、自信がない先生は眉毛の下にそって眉尻側だけひかえめに切り、中縫いをPDSなどの溶ける糸で皮膚は連続縫合でもかまわないのかもしれません。
そもそも自信がない先生は眉下切開やらないほうがいいし特に若い人にはやらないほうがいいと思います。
眉下切開についての詳しい情報は以下のページでもご紹介しています。ぜひ合わせてご覧になってみてください。
「六本木境クリニックの眉下切開」についてはこちらの記事で詳しくご説明しています。 「眉下切開を受けたらひきつれた・・・」そんな時どう修正するべきか、についてはこちらの記事で詳しくご説明しています。 「眉下切開はドッグイヤーになってしまうの?」についてはこちらの記事で詳しくご説明しています。
リンク:眉下切開(眉下リフト)
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リンク:眉下切開と眼瞼下垂の手術など