眉下切開の傷跡が目立つ切り方

先日は傷跡がとても目立っている人から相談を受けた話でした。今回はあらためて、眉下切開の傷跡が目立つパターンについて考えたいと思います。

眉下切開についての記載のチェックポイント

  • 眉毛の下に沿って切る
  • wedge incision
  • 特徴的な傷跡(L字型など)
  • 中縫いが溶ける糸
  • 中縫いが露出する
  • 皮膚縫いが連続縫合
  • 黒い糸は意外に目立つ
  • 抜糸が早すぎる

わたくしが思うに上記のような記述が要注意だと思われます。それぞれ、眉下切開の切り方・縫い方に分けて考えてみたいと思います。

眉下切開の切り方の問題点

  • 眉毛の下に沿って切る
  • wedge incision(おそらく逆毛根斜切断法)
  • 特徴的な傷跡(L字型など)

眉毛の下に沿って切る眉下切開

眉下切開で「眉毛の下に沿って切る」と表現している医師が多いようです。

「眉毛の下に沿って切る」と言う言葉が意味するものは眉毛とキズや傷跡が離れているということです。川に沿って歩くと言うと川の横の道を歩くイメージですよね。

一方、わたくしの眉下切開で切る方法では眉毛に切り込んでいますので、川に例えると足が濡れるようなところ・川の中の浅瀬を歩いているというわけです。

眉下切開で眉毛の下に沿って切った場合、もともとが眉毛から離れたキズですから、眉毛から離れた傷跡となります。

それだけではありません。眉毛の下に沿って切るような切り方の場合、眉毛の近くを切れば切るほど毛根が死んで眉毛が抜けるので、眉毛から離れた傷跡となります。

この方法での眉下切開の経験が多い医師ほど、どんなに眉毛近くを切った場合でも眉毛からかなり離れた傷跡となるので、毛根を殺さないように、わざと眉毛から少し離して切っているようです。

でも、眉毛の下に沿った眉下切開の傷跡は結構目立ちます。

眉下切開とアートメイク

前述のように眉毛の下に沿って切ると、かならず眉毛の下に傷跡ができます。眉毛の下の傷跡は眉毛にかくれませんので、人目に付きます。

アートメイクを入れたらいい、メイクでかくせばいいと言った考え方はあくまで次善の策です。

眉毛の中に入っている傷跡についてはメイクやアートメイクでたやすくかくれますが、

眉毛の下に離れた傷跡を隠すためにアートメイクを入れて、まるでイモトさんのような太いアートメイクになったという相談もあります。

じゃあ、眉毛のすぐ下を切ったらいいのでは?とどこからか言われそうですが、そんなに簡単な話ではありません。

意外と計算通りにはいきません。前述のように眉毛の下ギリギリで切ると、多くの場合、キズ周囲の毛根が死んで、眉毛がだんだん抜けて行きますので、眉毛からずいぶん離れた傷跡になっています。

ネット上に眉毛から下に大きく離れた傷跡をよく見かけますが、執刀医は眉毛から大きく離して切る人は誰もいません。経過とともにだんだん毛が抜けて眉毛から傷跡が離れて行ってしまったということです。

眉下切開のwedge incisionと毛根斜切断法

他院でwedge incisionで切られたという人の眉下切開の傷跡がとても目立っていたケースがここ最近だけで3回もありました。

わたくしはwedge incisionとは毛包斜切断のことを言っているのかと思っていましたが、どうも・・毛根をよけて切っているただの斜め切開のこともあるらしいです。

もちろん医師によって表現や解釈は違っていると思いますが、wedge incisionには毛包を切断すると言った意味合いが含まれていません。

わたくしは毛包斜切断法の逆の切り方をwedge incisionと呼んでいる医師が多いように思っています。そして、この方法はは眉毛から離れた目立つ傷跡になりやすい方法の1つだと思っています。

毛包斜切断法による眉下切開の難しさ

わたくしの行っている毛包斜切開とは眉毛にわざわざ少し切り込んで、毛根を切断し、その上にスライスさせた極薄の皮膚をのせて縫う方法です。

この方法ですと、だんだん傷跡や傷跡の下から毛が生えてきますので、眉下切開の結果がまるで眉毛の中を切ったかのように見えるというわけです。

毛包斜切断法のようにキズの下から発毛する方法が理想的であることについて異論をはさむ余地はないと思われますが、なぜ、多くの医師が行わないのでしょうか?

一言で言うと、縫うのがとても難しくなるからです。元々うすい睫毛側の皮膚をわざわざ極薄にスライスします。

そのため、手術操作で皮膚がちぎれやすく、しかも、内側にローリング(インバート)しやすいので、上皮成分が傷口に入り込みやすいです。

上皮成分が傷口に入るとキズが治りにくいだけでなく、アテロームと言うできものが多発して感染を生じやすいです。

実際に毛包斜切断法で行われたという他院眉下切開傷跡修正相談ではデコボコでマダラの傷跡ばかりです。

毛包斜切断法は上手く縫えなければかえって害しかありません。

六本木境クリニックの眉下切開の毛包斜切断法

実際にわたくしがどのように毛包斜切断を行っているのかを詳述します。まず、ベッドをギャッチアップ(頭を高く斜めにすること)させて、手術を行っています。

メスの切れが落ちると傷口がささくれるので、15番メスを片側2枚ずつ(1回の眉下切開手術で合計4枚)使用して丁寧に切開し、少しでもささくれを発見した場合には11番メスと眼科用剪刀で時間をかけて整えます。

尖端が0.7mmのチタン製アドソン鈎ピンでできるだけ皮膚はつままずに、主に眼輪筋や真皮の丈夫な部分を把持し、皮膚は鈎ピンの鈎で軽く引っ掛けるような感じで、中縫いも皮膚縫いも縫ってゆきます。

皮膚縫いのとき、尖端が0.7mmのチタン製のアドソン鈎ピンでインバートしていないか?表皮が入り混んでいないか?を端から端までチャックします。

想像しただけで2時間かかることが分かると思います。

眉下切開の傷跡の形について

また、L字型などの特徴がある傷跡は要注意です。特徴的な傷跡はそれだけで不自然に見えます。不自然な傷跡はたとえ傷あとがきれいであったとしても、意外と目につくものです。

眉毛の中にかくれたL字型でしたら、まだそんなにクッキリとは見えないのかもしれませんが、今まで来院されたかたのL字型の傷跡はすべて、まるで眉頭を強調するかのように眉毛を縁取って切られていて、遠くから見てもたいへん目立っていました

相談に来院されたかたの一人は親御さんから「おばあさんのアートメイクに見える」と言われたそうです。

眉頭のキズや傷跡はとくに要注意です。ほとんどの人は人の眉頭あたりを見て話していますので、眉頭の傷跡が目立つと人と目を合わせて話すことができなくなります。

眉下切開の傷跡は本人やまわりの人が眉毛そのものであると勘違いする雰囲気でしかも眉毛にかくれなければなりません。

そして、きれいなキズしかきれいな傷跡にはならない。汚いキズはかならず汚い傷跡になります。キズや傷跡の差は個人差ではなくて執刀医の技術の差です。

 

眉下切開についてはこちら

https://www.problem-eyelid.net/

https://roppongi-sakai-clinic.com/guidance/eyelids/

https://roppongi-sakai-clinic.com/faq_mayushita/