前回は眉下切開の真皮縫合などの問題点について考えましたが、今回は皮膚縫合の問題点について考えてみたいと思います。
眉下切開の中縫い(真皮縫合など)
- 中縫い(真皮縫合など)がPDSなどの溶ける糸
- 中縫い(真皮縫合など)が露出する
眉下切開の皮膚縫合の問題点
- 皮膚縫いが連続縫合
- 黒い糸は意外に目立つ
- 抜糸が早すぎる
眉下切開での結節縫合と連続縫合
眉下切開の皮膚縫合についても、わたくしが要注意だと思う記載があります。1つは連続縫合です。
部位や手術の種類によっては結節縫合よりも連続縫合のほうが有利だと言われています。
連続縫合とは1回1回糸を結ばずに最初と最後だけを結んで途中をまつり縫いのように縫う方法です。一方、結節縫合は1縫いごとに糸を結んでゆくやり方です。
たとえば、二重切開法や下眼瞼形成術(下まぶたのたるみ取り)などのでは、結節縫合で縫うと目に糸が入りやすかったり、二重ラインが糸で邪魔をされるので連続縫合のほうが有利だとされています。
わたくしはそのように連続縫合のほうが有利だと言われている部位でも、最終的な傷跡のことを考えて結節縫合で細かく縫っています。
眉下切開での連続縫合の利点はただ速いだけ
傷跡のことだけを考えた場合、結節縫合よりも連続縫合の方が有利なケースなんてありません。では、連続縫合で良いことって何でしょうか?
結節縫合よりも連続縫合のほうが誰でも早くできますので、手術時間が早くなることですよね。特に眉下切開の皮膚縫合での連続縫合は結紮縫合よりも時間がかからない以外のメリットは何もありません。
でも、眉下切開で皮膚縫合を連続縫合で行っている医師は「真皮縫合さえきれいにできていたら、皮膚縫いなんて連続縫合で問題ないんだよ。
そんなことよりもデザインや内部処理・真皮縫合など他のことに手間ひまを使ったほうがいいんだよ。」などと言うに決まっていますが、本当にそうなのでしょうか?
皮膚を連続縫合で縫うと眉下切開の傷跡が汚くなる
連続縫合の欠点は丁度良い糸の閉め具合というものがないことです。少しでもゆるく結ぶと、浸出液がキズから漏れ出ます。浸出液は臭いし、かゆいです。
浸出液によってキズの周囲が皮膚炎を起こして赤くなったり、皮膚がただれて、ただれた皮膚からも浸出液が出始めたりします。悪循環ですよね。
その上、浸出液はばい菌にとっては栄養ですので、ばい菌が増えて感染を起こしやすかったりします。
結局、連続縫合でゆるく結ばれた傷跡は最初赤みが強く、その後、白い部分が多い幅広の傷跡になります。
また、少し強く結べば、キズのふちの血流が悪くなって、これまた傷跡が汚くなると言われています。
そのため、こだわりの強い医師は眉下切開の皮膚縫いを1針1針時間をかけて丁寧に結節縫合しているというわけです。
眉下切開での結節縫合の利点
眉下切開で皮膚を連続縫合を縫うことの欠点ばかりを指摘してきましたが、今度は眉下切開で皮膚を結節縫合で縫うことの利点って何でしょうか?それはずばり・・1針ごと調整が効くことです。
結節縫合では結びかたが少しでも強すぎる場合や少しでも弱すぎる場合には1針ごとやり直すことができます。
また、結節縫合では皮膚を縫った後でも、目を開けてもらったり座ってバランスを確認してから、全体のバランスを考えて簡単に一部分をやり直すことができます。
連続縫合ですと、やり直す場合、端から端まで全体をやり直すしかないので、やり直すことを躊躇してバランスが狂ったままになったり結果が悪くならざるをえません。
眉下切開の皮膚縫合で黒い糸を使用すると意外と目立つ
意外に思われるかもしれませんが、眉下切開の皮膚縫合を黒い糸で縫うとかなり目立ちます。
眉下切開のキズを見たことがない人にとっては、「えっ、でも・・眉下切開のとき黒い糸で縫うと、眉毛が黒いのでカモフラージュされて目立たないのでは?」って話ですよね。
そもそも、眉毛には毛流という毛の流れがあります。眉頭の眉毛は頭の方に向かっていて、次第に耳の方向に向かうようになっています。その流れが変になると異様な雰囲気になって人目を引きます。
眉毛の植毛が不自然で人目を引くのは毛流が少しでも狂うと目立つからです。
また、黒い糸は結び目がとても目立ちます。そして、何よりも手術用の糸は黒であるという一般認識が広く普及していますので、眉毛が黒いからと言って、黒い糸を使うと手術していることが一目瞭然となってしまいます。
眉毛のところで黒い糸が結んであると、眉下切開の手術を受けていると気付かれます。あるいはそのために結び目が少ない連続縫合を行っている医師がいるかもしれません。
眉下切開の皮膚縫合での糸の結び方
わたくしの眉下切開では、結び目が1つしかない2回結紮法を行っていますが、六本木境クリニックに見学に来られている先生方でもここまでは期待できないでしょう。
一般的にこの方法では糸がほどけやすいと考えられ、糸がほどけると創部が離開して出血して傷口が開き、臭い汁(浸出液)が出続けて汚い傷跡になったり、再縫合が必要となります。
でも、わたくしはこの方法で糸を結び始めてからは、結び目が1つしかない恐怖心と戦いながら背水の陣の気持ちで1回ずつ糸を結ぶようになり、かえって糸がほどけにくくなりました。
ただでさえ、眉下切開での糸結びはとても難しいです。眉毛だけじゃなくてうぶ毛が結び目に入ると後からほどけやすいので、1回ずつ眉毛だけじゃなくてうぶ毛もよけながら結んでゆくわけです。
あるいは、眉毛やうぶ毛をよけながら糸を結ぶ煩雑な操作を減らすため、眉下切開の皮膚縫合を連続縫合で縫っている医師もいるかもしれません。
眉下切開で抜糸が早すぎる
早めの抜糸は傷口が開いたりして傷跡が汚くなりやすいです。わたくしは眉下切開の抜糸は2週間弱でいいと思います。
真皮縫合など中縫いがシッカリかかっていると、1週間以内など早めに抜糸しても大丈夫という意見もありますが、そのような場合には80点の傷跡を目指しているのだと思います。
眉下切開の傷跡は目立つと悲惨・汚いと悲惨というよりは少しでも目立ったり、きれいでないと悲惨です。99点以上できれば100点を目指さなければなりませんので、2週間弱の抜糸をおすすめします。
もちろん、太い糸で縫われている場合には早めに抜糸しないと、眉下切開の傷跡がゲジゲジやムカデに似た漫画ワンピースのルフィーの左頬のキズのような昔の縫い傷になってしまいます。
眉下切開の傷跡は超重要
目の表情のほとんどは上まぶたの動きです。そして、目は口ほどにものを言うとも言われており、目の表情はお顔の表情の中でもとても重要です。
このため、人の顔を見るときはまず目を見ます。もう少し部位を絞ると目線の中心部は眉下の中央、眉間の少し下にあるというわけです。
よって、眉下切開の傷跡、特に眉頭付近の傷跡が目立つととても悲惨なことになってしまいます。
眉下切開では眼瞼下垂の手術や二重の手術のように二重の溝に傷跡がかくれませんのでなおさらです。
眉下切開では傷跡が目立たないことが一番大切なことですので、連続縫合で皮膚縫いをするなんてことはありえません。
連続縫合は早いけど傷跡は汚くなります。結節縫合は時間がかかるけど傷跡がきれいになります。
眉下切開についてはこちら
https://www.problem-eyelid.net/