わたくしの意見が少数派であることは
自分でも自覚しています。
では、少数派は間違っているのでしょうか?
劣っているのでしょうか?
分野によってはそうかもしれません。
でも、お金がからむと状況は一変するものです。
お金儲けのために、事実が大きく捻じ曲げられて
あたかも大勢の人の意見として流布されている場合もあります。
わたくしは自分の得意なものを宣伝するために
悪いものを良いものと捻じ曲げて言ったり、
自分が不得意だからといって
良いものを悪いものだと言ったりすることはありません。
刺青・タトゥーの削皮についてですが、
わたくしは、平成十年から10年以上にわたって、
さまざまな刺青やタトゥーの除去治療
(レーザー治療、分割切除、植皮など)を行ってきましたが、
「刺青・タトゥー除去治療には、本当にあまり良い治療がない」
とつくづく思っておりました。
そんなとき、学会で刺青・タトゥーの削皮・剥削について発表されているのを見て
「絶対にこれしかない!削皮しかない」
と気づいたのです。
しかも、やはりこれも自分が平成十年から10年以上おこなってきた
熱傷治療(やけどの治療)のやり方にソックリだったため、
「自分が刺青・タトゥー除去治療で削皮・剥削をやったなら
かなり良いクオリティーが出せるはずだ」
と確信しました。
通常、外科医というものは、
やったことのない手術をいきなり始めることはできません。
また、患者さんを説得できたとしても、
上手く行うことができなければ許されません。
そのため、自分の得意分野に近いことしか
始めることができないものです。
わたくしは、前述のような経験がありましたので、
スムーズに刺青・タトゥーの削皮を始めることができました。
そして、最初の手術からかなり上手くできました。
わたくしが削皮をおこなった最初の患者さんは、
それまで、切除と植皮で刺青・タトゥー除去治療を
お受けいただいていた方でして、
一番広い部分の刺青除去を希望されたので、
削皮をご提案しました。
その際、自分はやけど治療の経験が豊富で、
体のあらゆる部分を削った経験があるということ、
そっくりな手技ではあるが、
刺青やタトゥーには行ったことがなく、今回が初めてである
ということを正直にお伝えしました。
そして、「上手くできる自信はある」
ということもお伝えしました。
結局、その手術はとても良い結果となり、
「以前受けた植皮や切除より、削皮の方がずっと良い」
と、患者さんにとても喜んでいただけました。
こうして行い始めた刺青・タトゥー除去の削皮ですが、
その後も1例行うごとに「前回よりも1%でも改善したい」
と渇望し、全身全霊で削皮手術を行い続け、今に至っております。
眉下切開やスプリングスレッドも似たような感じです。
わたくしは、眉下切開を行う前は、
平成十年から15年以上、眼瞼下垂の手術を行っておりました。
学会などで眼瞼下垂の発表を聞いたり、
論文も読んだりしておりましたが、
眼瞼下垂の手術のように二重ラインでいじりすぎると、整形顔になりやすいし、
しかも、「整形に失敗した顔」になりやすい
ということに気づきました。
そんなとき、巡りあったのが眉下切開でした。
約10年前、わたくしが助手をしていた当時の上司が
わたくしの目の前で眉下切開を行ってくださったのです。
それから眉下切開に興味を持つようになり、
自分なりに勉強してすぐに眉下切開の手術を始めました。
以来、一例一例「前回よりももっと良い結果を出したい」
と、頑張っております。
スプリングスレッドに至った経緯についてですが、
以前、大手美容外科に勤務していたときに
吸収糸(溶けてなくなるタイプの糸)を使う
リフトアップ施術を行っていました。
でも、「糸が吸収された後にコラーゲンが増えて長持ちする」
という説明がどうしても納得できず、
詐欺師の言葉に思えて・・
真顔で患者さんに言うことができませんでした。
普通、そのような力とは、糸の張力の1%以下のはずです。
実際、患者さんから「1~2ヶ月しか効果がなかった」
と、散々言われ続け・・
そのたびに
「おかしいですね・・
メーカーは1年以上持つといっているのですが・・」
と言うはめになり、
患者さんからは
「メーカーはどうでもいいです。
先生の見解をお聞かせください」
と言われ・・
「わたくしが間違っていました。
どう考えても、メーカー云々よりも、
実際にお受になった患者さんがどう感じるか
ということの方が大切ですよね」
とお詫びをする・・
というやり取りが何度もありました・・
そのような経緯がありましたので、
スプリングスレッドを知ったときは
脳天を突き抜けるほどの衝撃でした。
スプリングスレッドは糸の伸縮性と無数の突起によって力が分散され、
一点にかかる力がほとんどゼロに近いため、
「ゆるみにくい」ということが非常に理にかなっていて
その高い効果を疑う余地がありませんでした。