夏に手術を受けると暑いので感染しやすいのでは?
夏に手術を受けるとベタベタしてかゆくて臭くて地獄のようになるのでは?
といった質問が非常に多いのですが・・・
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境クリニックでは、術後に「洗えない・シャワーできない」という日は設けておりません。


スプリングスレッドや眉下切開などの顔の手術の場合は、手術直後から直接傷口を洗っていただいております。ボディーソープやシャンプーの泡が傷口についても問題ありません。

むしろ洗顔剤やシャンプーで積極的に洗っていただいております。その方が血餅などが早く落ちて、キズや傷跡が早くキレイになりますし、そのような方針にしてから、実際に感染がかなり減ったように思います。

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「傷口を洗ってはいけない」という考え方は、一体どういう意味合いなのでしょうか?というご質問をよく聞かれますのでご説明させていただきます。


丁寧に縫っていないのでお湯がキズの中に入るという意味でしょうか?それとも、境クリニックのように傷口を丁寧にきれいに縫い合わせている場合は、例外として洗っても良いという意味合いなのでしょうか?

違いますよね。粗く雑に縫っている傷口でも、開いている傷口でも、出血しない限りは、洗った方がばい菌も汚れも少なくなるということは疑う余地がありません。

刺青・タトゥー削皮の場合は、手術の当日は出血するので入浴もシャワーも禁止ですが、翌日からは入浴していただいております。もちろん、湯船につかってもOKです。「え?シャワーはいいけど、湯船はちょっとね」という意見もあるかと思います。

でも、傷口には無数の菌がついていますので、こうした場合、シャワーと湯船ってそれほど差がないのではないでしょうか?(もちろん追い炊きなどをしていないキレイな湯船限定ですが)たとえば、傷口に1兆の菌がいると仮定すると、シャワーには10。湯船には100くらいの菌がいることになります。1兆に対しての10と100ですよ。違いにこだわることって意味あるんでしょうか?

人間の世界では、満員電車から大量の人が出てきているのに、流れに逆らって無理やり入って行く人がいます。でも極端な濃度差の場合、全然そのようなことは起こりません。何でも濃度の差ってそんなものだと思います。わたくしはいつも「湯船につかると、ばい菌が浴槽のお湯で薄まって、かえって安全になります」と説明しています。巨大津波が引き潮の時、沖から浜に泳いで戻ってくることができるような人は誰1人いません。

わたくしの形成外科の仕事は、広範囲熱傷(広いやけど)の方をお風呂に入れたり、やけどの傷を浴槽で洗ったりという仕事からスタートしました。また、褥瘡(床ずれ)の方をお風呂に入れたりという仕事も散々やりました。そのような経験があって、上記のような感覚・傷を洗うということが当然のこととなったと思います。

また、湯船であったまると出血しやすいといった、一見まともそうな意見もありそうですが、そもそも、削皮の翌日に湯船で出血が多いというようでは、明らかに削りすぎです。削皮でそのくらい深く削られてしまうと、必ずといっていいほどケロイド状になってしまいます。

いろいろ述べましたが、そのような理由から、境クリニックでは術後にお風呂に入れない日を設けておりません。スプリングスレッドや眉下切開などの顔の手術では、朝にシャワーを浴びて来ていただき、「傷口を洗わないなんて、ばい菌を増やしているようなものですよ」と説明して、当日から義務的に洗顔・洗髪・シャワーをしていただいています。「手術の日は1日に2回シャワーを浴びたので乾燥した」と言われるほどです。

夏場に手術を受けてベタベタしてかゆくて臭くて・・なんて、大昔の手術のように思います。傷口を洗えないだなんて、真夏だけでなく真冬であっても痒くて臭くて大変でしょう。「洗わないでください、こまめに消毒してください」といった説明は前時代的なものと言えるでしょう。避けて洗う・避けてシャワーを浴びるという方法では、ベタベタして、ムレてばい菌が増えて、痒くて・・・かえって大変でしょう。でも、もっと危険なのは、フィルムなどを貼っての入浴・シャワーです。フィルムなどを貼っての入浴やシャワーは、ビニールハウスでばい菌を栽培しているようなものでしょう。

また、消毒についてですが、器具を滅菌・消毒するというのはいいことですが、人間を消毒するというのはまったく良いことではありません。消毒については昔から「変だな」と思っていました。洗車マシーンのようなブラシのついた機械でゴシゴシ・ゴリゴリと消毒液で洗うと皮膚がむけてただれるでしょうし、どうやって毛穴の中まで消毒するんだ?と研修医の頃から疑問を感じていました。消毒って、なんと・・、130年前のお医者さんの勘違いによるものという説もあるそうです。

 

抗生物質はもともと人間の細胞には存在しない「ばい菌特有の部分だけ」を攻撃するため、ばい菌だけが弱ると言われています。それに対して、消毒はばい菌以外の部分まで無差別に攻撃すると言われています。そのため、正常な部分までが弱ってしまいます。

また、消毒はタンパク質に付くとすぐに失活してしまうため、浸出液が出ているような傷口には一切効果がないとも言われています。それどころか、有害物質が残るため、傷に悪い影響が及んで、細胞が痛んでしまい、傷の治りが悪くなって、どす黒く、汚ない、ケロイド状の傷跡になる傾向があります。その他にもいろいろな支障を来す恐れがあります。

 


 

抗生物質イメージ

抗生物質
抗生物質はばい菌だけを攻撃します。

 

消毒
消毒はばい菌以外の部分まで無差別に攻撃します。

 

食事をした後の食器と同じように、「傷口を洗えば、ばい菌がほぼゼロになるのでは?」と思っています。

また、手術後の処置の説明に「ガーゼ」、「消毒」、「乾燥」などといった用語が出てくる場合は、古い治療を行っているのでしょう。最新医療ではそのような用語は出てきません。替わりに「創傷被覆材」、「洗う」、「湿潤療法」といった用語が使われています。

今まで、わたくしの刺青・タトゥーの削皮を受けた方で、感染して死ぬほどひどい目にあった方が2人いましたが、お二人とも・・なんと・・・近所の医院で消毒をしてもらっていました・・