眉下切開の傷跡について、実際の方法

眉下切開の傷跡が目立たない工夫について

前回は形成外科専門医の後輩から眉下切開の傷跡を肥厚性瘢痕にしないコツは?という衝撃的な質問があったという話でした。

でも、わたくし自身、眉下切開を12年間1000例近く行ってきましたが、肥厚性瘢痕になるどころか、肥厚性瘢痕になるかもしれないと心配になったことさえも一度としてありませんでした。

でも、あえて眉下切開の傷跡をきれいにするコツのようなものを開示したいと思います。

傷跡を目立たせない肥厚性瘢痕にならないような工夫と言っても、ざんねんながら特別な薬や再生医療的な話は一切出てきません。

この世に魔法のような薬や魔法のような方法は一切ありません。手術に王道なしです。眉下切開で肥厚性瘢痕になったり傷あとが目立つのはほぼ100%手術手技の問題だとわたくしは思っています。

眉下切開で薬や再生医療チックな話なんて、もし登場することがあったとしたら、それは切って縫うことが上手くない場合の言い訳にすぎないと思われます。

これから眉下切開の傷跡を目立たせない肥厚性瘢痕にならないような工夫と言える具体的な手技をお話しします。

 

眉毛全長切開法

眉下切開の手術当日、眉毛を普段描いている人は普段通り描いて来てもらいます。その描いた眉毛の形を参考にして、眉下切開で眉毛を切る形・デザインを決めます。

眉毛の下に沿った傷跡になると眉頭側が非常に目立って必ず困るので、眉下に沿って切開するのではありません。

眉下切開で切って縫ったあとの形が、自分自身や周りの人がその人の眉毛だと思っている雰囲気になるように切開します。

また、外側だけの眉下切開ではまぶたがひきつれて吊り目になったり、まぶたの内側に変な斜めの線が走っている人が大勢いるようです。

途中までの眉下切開ではまぶたが必ずひきつれると思われますので、カモフラージュ効果も期待して眉毛を全長切開しています。

もちろん、眉毛が短くて外側の眉毛がない人は、描いてきた眉毛を参考にして外側に切開線を延長します。

 

毛包斜切断法

毛包斜切開法の切開の方法

眉下切開のとき、わたくしは手術用ベッドを15度くらいギャッチアップしています。彫が浅い人は15度以上、彫が深い人は15度以下と言った感じで眉頭側が立ちすぎないように調整しています。

また、睫毛側は自由縁といって目玉の上に浮いているので安定していませんから、眉毛側を先に切ってしまうと、睫毛側が不安定すぎて上手く切ることができなくなります。

よって、睫毛側を先に切開します。その後、眉毛側を切開しますが、眉毛側はまさに毛根をたくさん切断するので非常に硬く、メスは新しいものに替えた方がいいです。

上下ともに皮膚に対して45度くらい斜め、眉頭側も皮膚に対して45度くらい斜めをイメージして切っています。

上下を切開したあと眉頭を切開、ついで眉尻を切開します。これらすべての工程で、皮膚がささくれると上皮成分が迷入してアテローマというできものになることが多いので、

皮膚がささくれないように拡大鏡で見ながら注意深く全ての工程を行います。通常、皮膚を切る全ての工程で、円刃15番を使用しています。

(もし、皮膚がささくれてしまったら、11番メスと眼科剪刀、先の細いアドソンセッシを用いて整えます。)

眉下切開で眼輪筋を傷つけると出血が多くなります。神経と血管は常に並走しているので、深い部位の出血をバイポーラなどで止血すると、痛みやしびれたと言われることが高確率に起こります。

よって、眼輪筋は傷つけず、眼輪筋上で形成剪刀(ハサミ)を用いて皮膚・皮下組織を切除します。

 

毛包斜切開法による眉下切開の縫い方

眉下切開で毛包斜切断による眉毛全長切開を用いて眉毛本来のカーブを再現すると、困ったことが起こります。

トラップドア変形(飾り窓変形)と言って、弧状のカーブがかかったキズは古墳のように盛り上がった傷跡になりやすい性質があります。

そして、毛包斜切断のような斜め切りのキズはうすい皮膚のほうが分厚い皮膚のほうに乗りあがりやすく、このことによって、トラップドア変形(飾り窓変形)が強調されやすいです。

また、睫毛側のうすい皮膚はローリングしやすいので1縫いごとにセッシでインバート(皮膚の上皮成分・表皮が内側に入りこむこと)していないか確認します。

インバートしたままにしておくとキズが治りにくく傷跡が溝状になったりアテロームになったりします。

また、うすい皮膚は縫う時、マイクロ(顕微鏡手術)で血管をあつかう時のように丁寧にあつかわないと、すぐにちぎれてささくれ、アテロームができやすい。

このアテロームのために凸凹でマダラになった毛包斜切断法による眉下切開の傷跡をよく見かけます。

眉下切開の毛包斜切開法その他の工夫

糸結び

わたくしの眉下切開の糸結びは多くの医師から驚かれているのですが、2動作のよる一回結びです。

わかりやすい利点としてはノッド(結び目)がたいへん小さいので、まるで結び目がないかのように見えます。このことが非常に目立ちにくい1つの重要な要素のようです。

いくら極細透明な糸で縫っても血がついていると、普通は結び目が結構・・目立つんですよね。1回結び法ではほとんどどころかぜんぜん目立ちません。

眉下切開の手術見学の先生方からは「ほどけないのか?」って、誰でもそう思いそうな質問がいつもあります。どうしても逆説的な話に聞こえてしまうと思いますが、このことにより、かえって糸がほどけにくくなりました。

修験道の修行や背水の陣 防御の構えがない薩摩の示現流のような意味合いなのでしょうか?もしほどけたら、傷口が開いて血まみれなので、絶対にほどけないように・・と今までよりもけた違いの緊張感で1つ1つの糸結びを行っているので、かえってほどけなくなりました。

眉下切開の術後処置

眉下切開の手術直後からキズを洗顔剤で洗ってもらっています。このことが言えないようではキズの専門家ではありません。洗ったほうがばい菌が少ないことは今や常識中の常識です。

でも、洗顔剤はキズに悪いのではなんて・・まことしやかな意見もあるでしょうけど。そのように言われると傷口を丁寧に合わせていない、隙間が多いことを暴露しているようにしか・・わたくしには聞こえません。

そして、洗うことによって傷口の血液が取れて行き、よりピッタリと隙間なく創縁が合うことになります。

そして、特別な薬は一切いらないことを強調しておきます。飲み薬も塗り薬も注射もすべてです。この辺のサジ加減は病気の治療と同じように考えてかまいません。

薬というものは調子が悪いときに使うものです。病気じゃない健康な人に用いても副作用だけ出るくらいですよね。キレイに切って縫われたキズについては余計な薬はいりません。もし、使っても副作用がでるくらいのものでしょう。

眉下切開の傷跡について思うこと

眉下切開の傷跡をきれいにするため最大の鉄則は、きれいなキズしかきれいな傷跡には絶対ならないということです。

汚いキズはどんなにいろいろな手を尽くしても汚い傷跡になり、きれいなキズは何もしなくてもきれいな傷跡になると言うのは、誰が考えてもごく当たり前のことです。

特殊な薬・専門用語や再生医療チックな用語が出てきたときには要注意です。

素人の方々がだまされやすいのはそのような用語が出てきたときですから・・「オレオレ・・」って言われたときと同じくらい警戒していろいろ調べたり疑ったり、いろんなところに相談に行った方がいいですよ。

キズって一旦つけると絶対になくなりませんし、眉下切開のような美容外科手術に手遅れは絶対ありません。現に六本木境クリニックの眉下切開は90代までが受けていますから・・

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