愛媛県の40代女性から眉下切開について質問がありました。
【Q】
眉下切開の手術動画をいろいろ見比べて、
境先生の眉下切開動画に思わず見入ってしまいました。
独特な精確で速い手さばき、
圧倒的にきれいな縫い目だと感じました。
素人目で見ても、他の手術動画と
大きな差があるように感じました。
ところで、質問があります。
眉下切開は抜糸するため、糸が残らないのですよね?
【A】
眉下切開の手術動画をご覧になったのですね。
実はこの動画には、もう一つ見どころがあります。
この動画は編集はしていますが、
速さはいじっていません。
なんと、1倍速なのです。
1倍速ということを強調している理由ですが、
手術動画の動きが早いと、
手さばきがスムーズに見えて、
手術が上手く見えるため、
わざと速度を上げて動画をアップしている
クリニックも多いと言えるからです。
六本木境クリニックの動画は速度をいじらず
1倍速のままお見せしています。
また、編集している理由ですが、
わたくしがすごく神経質なので
圧迫止血と低出力のバイポーラ止血に
かなり時間がかかるためです。
そのような単純作業は、
医者から見ても非常に退屈ですので
ほぼ全て省かせていただきました。
自分で見ても、縫って結ぶスピードが
異常に正確で早いと思います。
速さの最大の理由は、
皮膚縫合での1回結紮法にあります。
ノッド(結び目)が、
なんと、ひとつしかないということです。
わたくしの経験上、
何回か結ぶよりも1回しか結ばない方が
薩摩の示現流のように、背水の陣のような気持ちで
丁寧に結ぶため、ほどけにくいようです。
1回結び法を行うようになってから
良いことがありました。
眉毛を分ける操作が極めて少ないため、
わずらわしさが少なくなって、早くなりました。
また、ノッド(結び目)が小さいので、
眉下切開の術後に他人から糸が見えにくく
縫っていること自体を気付かれにくくなりました。
言うまでもなく・・
眉下切開では術後の傷跡が目立ちにくい
ということが最も大切でして、
さらに、手術直後から人にばれにくい
ということもかなり大切です。
眉下切開は、
お顔の中心といえる部位の手術であって
キズが目立つと非常に見苦しいものです。
そのため、ダウンタイムが長いと
手術を受けてくれる人が少なくなって・・
医者は上手くなる機会を逸すことになります。
逆に、傷跡が目立たないだけでなく
手術直後からもキズが目立たない場合は、
眉下切開の希望者が増えて、
症例数が増えることになります。
ですから、症例数と外科医の実力は
比例関係にあるとよく言われています。
わたくしのように
大量に眉下切開を行っている医者ですら
数日、眉下切開の手術がないと
次に手術を行う時に感覚のズレを
少し感じることがあります。
毎日のように眉下切開を行っている医者と
時々行う医者とでは、巨大な差があり、
同じ手術だということ自体が
おこがましいと言えるのではないでしょうか。
糸の抜糸についてですが、
抜糸しても、表面にある皮膚縫いの糸しか取れません。
わたくしの眉下切開の場合、
中縫い・下縫いも溶けない糸を使っているため、
抜糸後も眉毛の奥には、
小さな透明の糸が残ることになります。
真皮縫合・下縫い・中縫いをしなかった場合、
まちがいなく、ものすごく傷跡が目立ちます。
また、溶ける糸を使用すると、傷跡がかなり目立つので
真皮縫合・下縫い・中縫いにも
わたくしは溶けない糸を使っています。
いろいろなことを言う医者がいますが、
結局、眉下切開は傷跡が目立たない
ということが圧倒的に一番大切です。
この部分の傷跡が目立つと
化粧でも隠すことができず、
人前に出ることが難しくなります。
眉下切開で一番大切なことは、
傷跡が目立たないということです。
逆に、糸が残るかどうかは、
全く大切なことではないと思います。